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2019-04-30

来歴の未来

たんたんたんと咳のこえがして、おりおりの声がして、たぶん夕焼けの頃だと思います、子守たちも静かな気持ちになっていて、遠くの時間に眠っている赤ん坊のことも忘れ、棒アイスのしたたりも地面に小さな声を聞かせて、街全体には人気もなく、宿り木がなんとなく心細い思いに耳を澄ませてもあかね雲に粗挽き胡椒のようなカラスたちの呼び交わす声がかすかにするばかりであり、暗闇が脳溢血の視界を暗くするように降りてきている。
私が屋台を営んでいた頃、それは常連ばかりのちいさなおでん屋でしたが、仕込みには昼からかかり、味がしみこむまでゆっくりと煮て、煮汁がにごらないように気をつけながら、たくさんの口笛を吹きました。
不思議なことには、その口笛は電話線を通って、街中の人の耳に届いたのです。なぜか、だれの話し声の後ろにも、私の口笛が聞こえていたのでした。
メモリーカードを携帯に入れて、たくさんのことを話しました。生まれて、学校にいき、登校拒否になり、冷たい海に入って、また、濡れたまま学校に戻り、誰にも何を言われてもなんとも思わなくなって、卒業し、それで、会社に入ってからもよく机を叩いてくびになって、それで、会社に火を付けようと思っているうちに泣けてきて、やめて、宗教をウロウロしているうちに、言葉が降りてくるようになって、そのうちに、信者ができて、小さな家で共同生活をしているうちに、煮詰まってきて、主な原因は性関係の乱れで、そのころには言葉は降りてこなくて、灯台の写真のポストカードに伝言を書いて、家を出て、しばらく売春をして、そして、いま、冷たい海に入っています。