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2019-04-30

来歴

ポツポツと発疹のように星が現れ、鍵をしめた(キティちゃんの描かれた戸棚に、震える筆跡のたくさんの葉書を束ねた引き出しに)、そして、ゴリラの人形の口に鍵を仕舞った。
ララちゃんの来歴は以下だ。
隣家の2階に干していた布団が庭に落ちていたので。はじめて隣家の呼び鈴を押した。隣家の室内に、かすかにベルの音がしていたが、誰も出てこなかった。仕方なく引き返して、庭の物干しに布団を干した。夕方になっても夜になっても隣人は現れなかった。夜に布団が湿ってしまうことを考えると屋内に仕舞いたかったが、隣人の布団が自室にまでに侵入してくることには抵抗があった。翌朝、隣家を訪ねると、ようやくインターフォンごしに返事をした。布団を干そうとしてたら切迫骨折になってしまった。重い物を持つことができないから、そちらで処分してくれないか、と言う。ずいぶん勝手な話だと思ったが、事情のあることだし、仕方ないと思い了解した。さらに、亡くなった娘の布団でもう必要ないけど、娘の好きな人形を寝かせるために使っていた、と言う。気味が悪くなって、そうそうに引き上げた。しばらく布団は庭に干したままだった。粗大ゴミの日まで間があったし、可燃物として出すために細かく裁断する気持ちにもならなかった。数日後に、庭にゴリラの人形が落ちていた。隣家から投げ込まれたにちがいない。
途中だが、私はいま山中にいて蚊に悩まされている。皮膚が弱いので、蚊取り線香や虫除けは使用できず、ただ手で追い払うばかりである。
どうしたのです?
竹林の奥から中年の女性が現れた。眼鏡をかけて、神経質そうな様子だ。
こんなに蚊が多いとは思わなかったのですが。まだ、5月でしょ。
女性は少しも笑わないで、
あなたの手紙は全部読みましたよ。
女性の手にカギが握られているのが見えた。私が驚いていると女性はさらに、
私はいつもあなたの横に寝ているのです。
とさびしい顔をした。
私は汗をかいて目を覚ました。身体のあちこちが蚊にさされたように赤くなっていた。